さんざん「登場人物の倫理観が変」とか批判された(僕も確かに気に入らない)石持さんが怒ったのか、「最初っからシリアルキラーものってことにすれば文句はあるまい」と言いたかったのか、いずれにせよこういう本を書いてくれたことで、逆に石持作品の正しい評価軸はどこにあるのかが明確に読み手の側にわかるようになりました。倫理じゃなくてやっぱり論理なんですよね。そういう意味で、石持さんがこの本を書いたことにはちゃんとみんな着目するべきだと思う。
ただ、じゃあ論理重視の作品として読めばよいのか、というと、実はそこにもちょっと問題が。論理的な可能性を詰めていくところで、「なぜそっちの分岐に進むの?」というところが何箇所かあり、それが「犯人がシリアルキラーであり、『狂人の論理』で動いているから」という形で正当化されている(ように少なくとも僕には思える)んですよね。で、この「狂人の論理」って言葉がまた微妙で、ふつうは「狂人だからといってわけのわからないことをするわけではなく、「常人」にも理解可能な一貫した論理で行動している」という意味の言葉なんですが、どうもこの作品に「狂人の論理」を当てはめると「冷静なようでやっぱ狂人はわけがわからない」という風にしか読めない。少なくとも注意深くちゃんと「本格ミステリ」っぽく読もうとした僕は、相当つまづきました。
とか言いつつ僕は石持作品は一作残らず読んでいるわけですから、何かそこに気になるものがあるのは確かなわけですが。
【もじにいりびたるの最新記事】


