2008年10月17日

『しらみつぶしの時計』

法月綸太郎さんの『しらみつぶしの時計』 を読む。非シリーズものばかりを集めた短編集です。

収録作は10編。密室とリドルストーリーを組み合わせたアイディアが光る「使用中」、好感殺人ネタをひねった「ダブル・プレイ」、最後にどんでん返しのある倒叙ものパロディ「素人芸」、パズリックなパスティーシュ「盗まれた手紙」、ショートショートで最後の一撃をくらわす「イン・メモリアム」、全然ミステリじゃない幻想譚「猫の巡礼」、オーソドックスなようで笑えるダイイング・メッセージもの「四色問題」、パスティーシュでハードボイルドっぽい「幽霊をやとった女」、不条理ゲーム小説「しらみつぶしの時計」、構図の逆転が見事な「トゥ・オブ・アス」、です。

「使用中」や「ダブル・プレイ」は本格ミステリ的なモチーフをかなりひねったやり方で用いています。こういうの、本格ミステリIQが高い人じゃないとできないんですよね。さすが法月さん。「イン・メモリアム」もオチが素晴らしいし、法月さんのテクニシャンぶりがいかんなく発揮されています。

しかし、なんといっても素晴らしいのは表題作。不条理なゲームの内容はこうです。閉じ込められた部屋の中には1分ずつ時間のずれた時計が1440個。つまり24時間に含まれるすべての分刻みの時刻が表示されています。閉じ込められた部屋から脱出するためには、この中から本当の時刻を示す時計を一つ探し出さねばならない。論理(ロジック)のみを導きの糸として、はたしていかなる解が導きだされるか?

たいていの不条理ゲーム小説って、作者が箱庭を作って勝手に人間を動かして、「人間ドラマ」とかを作り上げちゃうので僕は大嫌いなのですが、このように論理の純粋性を強調するための不条理ゲームは大好きです。何より解決がとてもエレガント。ラストで読みながら鳥肌が立ちました。しかしあったまいいなあ、法月さん。

ということで、とてもとてもオススメ。

posted by △ at 10:14| Comment(0) | TrackBack(1) | もじにいりびたる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/108206727

この記事へのトラックバック

「しらみつぶしの時計」法月綸太郎
Excerpt: すべて異なる時を刻む1440個の時計 その中から唯一正確な時計を探し出せ―― 神の命題か、悪魔の謎かけか!? 本格ミステリの名手が放つ、驚愕の推理、極限の論理(ロジック)! 無数の時計が配置さ..
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2012-05-05 00:57