2009年06月04日

『玩具の言い分』

朝倉かすみさんの『玩具の言い分』を読む。

朝倉さんの恋愛小説短編集。恋する女性をテーマにしたものばかりです。どの短編も「ああ、うまい!」と悶絶するような表現がちりばめられていて、感嘆しっぱなし。あと、エピソードや小道具の使い方が独創的なんですよね。例えば冒頭の作品「グラン・トゥーリスモ」のこのグラン・トゥーリスモってのが一体何を指しているのかとか、常人の発想力では思いつかないもの。

また、恋する女性に対するやさしくて皮肉に満ちた朝倉さんの視線がすばらしい。恋する女性を応援する小説もあるし、恋する女性を皮肉っぽく書いた小説もある。けれど、一編の小説の中で両者が同時に達成されることはない(というか、そういう風に書こうと思う人がいない)。そこを朝倉さんは達成しているから、読後感の複雑さ、豊かさが他に類をみないものになっています。風が吹けば飛んで行ってしまうような薄っぺらい恋愛小説を書く作家(誰とは言いませんが)に、小説を書くってのはこういうことなのよ、とこの本を差し出したい。ということで、オススメ。

posted by △ at 15:20| Comment(1) | TrackBack(1) | もじにいりびたる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どの作品も女性の寂しさ、嫉妬、性への欲求がリアルに表現されていました
トラックバックさせていただきました。
Posted by 藍色 at 2012年11月13日 10:38
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「玩具の言い分」朝倉かすみ
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