一つ一つの短編、気合いの入った書きっぷりで、全部読み通すのにかなり時間がかかりました。せっかくなので全ての短編について書きます。
「首折り男の周辺」伊坂幸太郎
タイトル通り首を折る殺害方法をとる男の周囲の人々を描いた小説。夫婦、犯人そっくりの男、少年をめぐる3つのセクションがそれぞれ絡み合ってラストに流れて行くさまは圧巻。そしてこのラスト一行!あれがこうなってこうなって、そこに着地するのか!という心地よい驚きに満ちています。やっぱりうまいです、伊坂さん。
「プロトンの中の孤独」近藤史恵
自転車のロードレースを題材にしてアスリート二人の交流を描いた物語。素直に面白かった。個人プレーvs.チームプレーって、王道ですよね。
「ストーリー・セラー」有川浩
不治の病に冒された元人気作家の妻を見守る夫の視点から書かれた小説。結構重いテーマ(家族の老いとか)を書く人なんですね、有川さんって。臆面もなくライトノベル的な恋愛の描写が受け入れられる人なら面白いと感じるだろうな。
「玉野五十鈴の誉れ」米澤穂信
これもしてやられた作品。玉野五十鈴とは、視点人物小栗純香専用の使用人。五十鈴と普通の友達になりたい純香は、権力者である祖母の一言でせっかく仲良くなった五十鈴から引き離され、食事すら与えられなくなります。しかし、というお話。仲の良い頃のあるエピソードがラストに伏線として効いてくるのが心憎い。ちゃんと米澤作品、読むべきかも。
「333のテッペン」佐藤友哉
友哉たんはミステリが好きなんだか嫌いなんだかよくわかりません。東京タワーのてっぺんで人が殺されて、その謎を探偵が収束させるお話。解決、じゃあないんですよねえ。友哉たんの作品、ものによってはすごい好きなのだが、時々よくわからなくなることがある(笑)。小説愛は感じるんだけど。
「光の箱」道尾秀介
サンタクロースをめぐる絵本と、辛い経験を共有した中学生の物語の構図がシンクロしていく、道尾さんのテクニシャンとしての一面が遺憾なく発揮された作品。このハッピーエンドには心が救われます。そのことを言った上で全然関係ない話として書いてみたいのだが、イマドキの小説に子供を出す時にはかならず「家庭に問題がある」かいじめを受けていなければならないのだろうか。
「ここじゃない場所」本多孝好
カタルシスのない『陽気なギャングが地球を回す』みたいな話。特殊能力っぽいものを持った集団が出てくるんだけれど、彼ら彼女らが活躍する、というわけでもなく。その中の一人が気になって仕方ない少女の物語になっています。きっとこの集団の活躍を描く続編があるんだと思う。最後はなぜか恋愛小説っぽくなってますが…単独では評価しにくい作品。
ということで、一つ一つ楽しく読ませていただきました。第2弾もすでに出版されているので、そちらも読みます。オススメ。
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私の言葉遣いが悪かったようで誤解を生んでしまいすみません。雑誌から書籍にする際に、ハードカバー刊行を経由してでなく最初から文庫として刊行する、という形態が最近のはやりだ、という意味で書いたつもりでした。私の中では雑誌(ここでは文芸誌)と書籍は全く別ものなんです。他の場合はどうかわかりませんが、図書館システムにおいては書籍と雑誌は分かれていますし。
どうも失礼しました。
今後ともじゃんじゃんコメントいただければ幸いです。
追記:すみません、スパムを消そうとして間違えてコメントを消してしまいました。申し訳ありません。