2009年10月26日

『静かにしなさい、でないと』

朝倉かすみさんの『静かにしなさい、でないと』を読む。

まずこのタイトルがすばらしいじゃないですか。ちなみに「でないと」どうなるのかはこちら。短編集で、各作品はつながらないし、テイストも多様だし、一体どういうテーマで統一されているんだろうと思いながら読んでいたんですが、今この記事を書くために集英社のホームページを見て納得。そうか、「身の丈に翻弄される人たち」の物語なんだな、これは。

そして慧眼な読者のみなさまなら分かる通り、朝倉さんはそういう話を書くのが抜群にうまいのです。もうね、僕はしょっぱなの短編「内海さんの経験」のラストで鳥肌が立ちました。「ブス」な女が昔の同級生と懇ろになるかいなか、って感じになっていく物語なんですが、その終わらせ方の絶妙さと言ったら。読み終えた瞬間、「あ、この本は大当たりだ」って思いましたもん。

調子にのって他の作品もさらっと紹介。自分が男にストーカーされているとの確信を盾に転落して行く女を描いた「どう考えても火夫」、優位に立ってやりたい年下の従姉妹が、お見合い後に自分を振った男と付き合い始めるという苦い経験とその顛末を描いた「静かにしなさい」、どん底の状態で一瞬だけ交わってすぐ離れる人生を歩む男女が、上昇の後に邂逅を果たす「いつぞや、中華飯店で」、自己破産してもロハスな生活を送るカップルを描く「素晴らしいわたしたち」、40代半ばにして結婚し、地方へと移住する事になった男女のやわらかいやりとりを描いた「やっこさんがいっぱい」、自宅を襲うネズミとダニの影におびえて行く女を描いた「ちがいますか」。どれをとっても面白くて、堪能しました。

ストーリーとしては「いつぞや、中華飯店で」が好みだけれど、描写にある縛りをかけることで実に優れた効果を上げている(なんだこの偉そうな物言いは)「素晴らしいわたしたち」も大好き。ま、全部好きってことですな。

おわかりの通り私は大変な朝倉びいきなのですが、その分を割引いても強くオススメです。朝倉作品、文庫化されているものが少ないんですよね…早く全作品文庫化してほしい。
posted by △ at 12:09| Comment(0) | TrackBack(0) | もじにいりびたる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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