2011年06月03日

2011年5月読書記録

5月の読書記録です。

福永信『星座から見た地球』新潮社
東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』小学館
フジモトマサル『終電車ならとっくに行ってしまった』新潮社
赤染晶子『乙女の密告』新潮社
いしいしんじ『遠い足の話』新潮社
リディア・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』白水社
藤子・F・不二雄原作、瀬名秀明著『のび太と鉄人兵団』小学館
伊藤計劃『ハーモニー』早川書房
中山七里『連続殺人鬼カエル男』宝島社文庫
加地大介『穴と境界』春秋社
『文藝』2011夏号森見登美彦特集
西成活裕『とんでもなく役に立つ数学』朝日出版社
佐々木敦『即興の解体/懐胎』青土社
『チーズと塩と豆と』集英社
アンダーウッド・ダッドリー『数秘術大全』青土社
ウィリアム・トレバー『アイルランド・ストーリーズ』国書刊行会
上岡陽江+大嶋栄子『その後の不自由』医学書院
鯨統一郎『新・日本の七不思議』創元推理文庫
D・M・ディヴァイン『兄の殺人者』創元推理文庫
ウェイン・C・ブース『フィクションの修辞学』書肆風の薔薇
保坂和志『小説の自由』新潮社
ディーター・ヘンリッヒ『神の存在論的証明』法政大学出版局
スラヴォイ・ジジェク他『オペラは二度死ぬ』青土社

しめて23冊。うち小説は14冊(含む文芸誌)。先月と同じ冊数だったあたりから考えると、この辺りが僕の通常ペースだということでしょうか。今月は、「私は好きだけれど人には薦めないかなあ」という小説がわりと多かった。そのなかでどなたにもオススメできるのは『星座から見た地球』『ほとんど記憶のない女』『ハーモニー』『アイルランド・ストーリーズ』ですかね。

小説以外では当たりが多かったのも5月の特徴かな。『穴と境界』『即興の解体/懐胎』『神の存在論的証明』は、どれも明晰な論理に貫かれた良書です。どなたさまもどれか一冊はぜひとも読んでいただきたい。

6月も楽しく読書いたします。
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2011年05月17日

2011年4月読書記録

もう5月も半分以上過ぎてしまったではないか。

田中久美子『記号と再帰』東京大学出版会
ティム・クレイン『心の哲学』勁草書房
中森明夫『アナーキー・イン・ザ・JP』新潮社
森博嗣『喜嶋先生の静かな世界』講談社
天野頌子『警視庁幽霊係の災難』祥伝社ノン・ノベル
蒼井上鷹『4ページミステリー』創元推理文庫
小島寛之『数学的思考の技術』ベスト新書
吉岡桂六『俳句における日本語』花神社
江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を』集英社
松本保美『オペラと経済学』勁草書房
今村夏子『こちらあみ子』
津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』
流田直監修『楽しく遊ぶ学ぶ せいかつの図鑑』小学館
中山七里『さよならドビュッシー』宝島社
劇団ひとり『青天の霹靂』幻冬舎
『21世紀の音楽入門6 和声』教育芸術社
アントニイ・バークリー『第二の銃声』創元推理文庫
エリック・マコーマック『ミステリウム』国書刊行会
辺見庸『生首』毎日新聞社
多和田葉子『尼僧とキューピッドの弓』講談社
ダニエル・タメット『ぼくには数字が風景に見える』講談社
メイカ・ルー『バイアグラ時代』作品社
津村記久子『ポトスライムの舟』講談社

23冊。うち小説は13冊。だいぶペースが戻ってきたか。
『抱擁、あるいはライスには塩を』『こちらあみ子』『君は永遠にそいつらより若い』『ミステリウム』『尼僧とキューピッドの弓』とずっしりしっかりした小説をたくさん読めたのはよかったかな。どれも強くおすすめします。

5月もそこそこ小説は読んでいます。でも、自分の専門分野ではない学術書が増えそうな予感…。
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2011年04月07日

2011年3月読書記録

3月の読書記録です。3月11日に東日本大震災が起こりましたので、
その後はあまり読めていないかな…。

斎藤美奈子『月夜にランタン』筑摩書房
ライフ・ラーセン『T•S•スピヴェット君傑作選』早川書房
ヴィトルト・リプチンスキ『ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語』早川書房
辻村深月『ツナグ』新潮社
有栖川有栖『長い廊下がある家』光文社
森川弘子『年収150万円一家』メディアファクトリー
石井洋二郎『フランス的思考』中公新書
尾崎翠原案/津原泰水著、『瑠璃玉の耳輪』河出書房新社
永井均『転校生とブラックジャック』岩波現代文庫
角田光代『ツリーハウス』文藝春秋
汀こるもの『動機未ダ不明』講談社ノベルス
東浩紀編『日本的想像力の未来』NHK出版
森見登美彦『四畳半王国見聞録』新潮社、p.43
綿矢りさ『勝手にふるえてろ』文藝春秋
アレックス・ロス『20世紀を語る音楽 1』
アレックス・ロス『20世紀を語る音楽 2』みすず書房
ジェニファー・アッカーマン『かぜの科学』早川書房
川崎弘二編著『日本の電子音楽増補改訂版』愛育社

しめて18冊。うち小説は8冊。どんどん小説の数が減っていきますね…猛省。
しかし読んだ小説に当たりが多かったのが3月の特徴かな。『ツナグ』『ツリーハウス』『四畳半王国見聞録』はどれも万人にオススメしたい傑作でしょう。僕がデビュー当初から「この人は絶対化ける」と思っていた辻村さんが『ツナグ』で吉川英治文学新人賞を受賞したのもとても嬉しい。

一方、エッセイ・ノンフィクション系でも当たりが多かった。『月夜にランタン』が無類に面白いのは当然として、『ねじとねじ回し』『20世紀を語る音楽』『かぜの科学』『日本の電子音楽』はどれも蒙を啓かされる良書でした。『かぜの科学』は最新のかぜに関する医学的知見が盛り込まれているのに読みやすい、特にオススメの本です。

4月こそは、小説をもっとたくさん読みたい…。
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2011年03月03日

2011年2月読書記録

2011年2月の読書記録。

穂村弘『絶叫委員会』
マーカス・デュ・ソートイ『シンメトリーの地図帳』
森達也×藤井誠二『死刑のある国ニッポン』
古野まほろ『群衆リドル』
熊野純彦『埴谷雄高―夢みるカント』
アヴラム・デイヴィッドスン『エステルハージ博士の事件簿』
古谷利裕『人はある日とつぜん小説家になる』
金井美恵子『猫の一年』
多和田葉子『雪の練習生』
大貫隆『聖書の読み方』
アラン・ベネット『やんごとなき読者』
岩田健太郎『予防接種は「効く」のか?』
道尾秀介『月と蟹』
大森望編『不思議の扉 時をかける恋』
菅原克己『英語と日本語のあいだ』
辻原登『東京大学で世界文学を学ぶ』
イアン・サンソム『蔵書まるごと消失事件』
イアン・サンソム『アマチュア手品師失踪事件』

以上18冊。う〜ん、2月は小説の割合が低いですね。エッセイを除いてしまうと、小説は半数の9冊。3月は小説を増やしたいです。やはり、小説の持つ人を遠くへ連れて行く力は魅力的ですから。

2月の推薦本は当然『猫の一年』『雪の練習生』『月と蟹』。『雪の練習生』は語り手に特徴がある小説なのですが、とても読みやすい。動物好きは必読です。

3月もどんどん読みますよ!
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2011年02月08日

2011年1月読書記録

2011年1月の読書記録。

恩田陸『土曜日は灰色の馬』
霧舎巧『新・新本格もどき』
詠坂雄二『乾いた死体は蛆も湧かない』
道尾秀介『球体の蛇』
有栖川有栖『闇の喇叭』
桐野夏生『ナニカアル』
アンドレ・バーナード『まことに残念ですが…不朽の名作への「不採用通知」160選』
角田光代・松尾たいこ『なくしたものたちの国』
山田詠美『タイニーストーリーズ』
岡野宏文×豊崎由美『読まずに小説書けますか』
アガサ・クリスティー『ビッグ4』
アガサ・クリスティー『青列車の秘密』
アガサ・クリスティー『七つの時計』
『ミステリ★オールスターズ』
石崎幸二『記録の中の殺人』

しめて15冊。やはり読書の時間があまりとれなかったからですかね…。

特に面白かったのはおくればせながらの『球体の蛇』、絵と文章の織り成す空気感が素晴らしい『なくしたものたちの国』。どちらも強くオススメです。あと、読み巧者を自称する方は『読まずに小説書けますか』もぜひ。視野が広がります。
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2011年01月13日

2010年小説ベスト1

2010年に私が読んだ本の中から、ベスト1を選ぼう、と思います
(そういう企画重視のブログへ移ったほうが私が楽だという…)。

国内作品と海外作品それぞれで数冊ずつ挙げますね。
基準は、「すべての人に読んでほしい、そしてこの本を推薦した私を賞賛してほしい」と思える本(苦笑)。

国内編はベスト5。
1位 柴崎友香『寝ても覚めても』
2位 角田光代『ひそやかな花園』
3位 朝倉かすみ『感応連鎖』
4位 森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』
5位 朝吹真理子『流跡』

ミステリは入りませんでしたね(苦笑)。
でもこの次あたりに京極夏彦『死ねばいいのに』が来ます。
ま、これもミステリじゃないんだが。

海外編は…すみません、読書数が少ないもんで、2つしか挙がりませんでした。
1位 『変愛小説集2』
2位 ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』

っていうか岸本佐知子さんが1位受賞ってことじゃん(苦笑)。

ということで、2011年も読みまくりますので、よろしくお願いいたします!
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2010年読書記録

ご無沙汰しております。
バタバタしてしまってブログアップが追いついていません。
そして、その間にも読書は継続しております。
ので、読んだ本の記録だけ残すことにしました。
それ以外の情報をお求めの方、いらっしゃいましたら申し訳ないです。

ということで、2010年に読んだ本、残りを列挙!

玉村豊男『世界の野菜を旅する』
キャスリーン・グレゴリー・クライン『女探偵大研究』
深水黎一郎『ジークフリートの剣』
アガサ・クリスティー『ゴルフ場殺人事件』
角田光代『ひそやかな花園』
アガサ・クリスティー『茶色の服の男』
京極夏彦『死ねばいいのに』
倉知淳『こめぐら』
七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』
河出書房新社世界文学全集1-06『暗夜/戦争の悲しみ』
山本貴光『コンピュータのひみつ』
E.M.フォースター『ハワーズ・エンド』河出書房新社世界文学全集1-07
アガサ・クリスティー『チムニーズ館の秘密』
ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』
西澤保彦『幻視時代』
麻耶雄嵩『隻眼の少女』
倉知淳『なぎなた』
俵万智×一青窈『短歌の作り方、教えてください』
朝倉かすみ『夏目家順路』
齋藤智裕『KAGEROU』
西澤保彦『こぼれおちる刻の汀』
朝吹真理子『流跡』
池上永一『トロイメライ』
デイヴィッド・ロッジ『ベイツ教授の受難』
ジェイン・オースティン&セス・グレアム・スミス『高慢と偏見とゾンビ』
乾くるみ『セカンド・ラブ』

ここまでが2010年で読んだ本です。

う〜ん、ブログを更新しない間にも結構読んでますね。そしてセレクトが非常にミーハー。
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2010年11月14日

『三匹のおっさん』

有川浩さんの『三匹のおっさん』を読む。

定年を過ぎてヒマを持て余している三人のおじさんが結成した自警団が活躍するコメディタッチの小説。この三人がキャラが立っていてしかもいいやつで、周りの登場人物もみんな面白い。おじさんたちと一緒に笑い、一緒に怒りながら読み進めていくうちに心の奥底をぐっと掴まれるような表現に何度も出会って、不覚にもぐっときてしまった。有川さんの本、あまり読んでこなかったけれども、これはちゃんと読んだ方がよいかも。

久しぶりに、あまり詳しくない作家の作品で本当によいと思えるものに出会えました。これだから乱読はやめられない。オススメです。
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『終の住処』

磯崎憲一郎さんの『終の住処』を読む。

第141回芥川賞受賞作です。著者の経歴やイケメン度からずいぶんと話題になりましたが、僕はずいぶんと騒ぎを過ぎてから読むことにしました。夫婦の間の不条理を奇妙な味の小説に仕上げた磯崎さん、確かに独創的な作家だなあ。風貌に比べて、作風はずっと俗世間離れしている。他の作品も読んでみたいです。
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『絡新婦の理』

京極夏彦さんの『絡新婦の理』を読む。

目潰し魔、絞殺魔、女子高にはびこる売春、それすべての事件の中心にいる蜘蛛とは誰か。自己増殖し続ける破壊のシステムを統べる悪魔的な知性をもった女に京極堂が肉薄していく、大変構えの大きなミステリです。

再読して思ったのは、社会構築主義、フェミニズム、クィア理論、社会システム論の全てが京極流に翻案されてこの小説の中に注ぎ込まれているのだなあ、ということ。そういう意味では、百鬼夜行シリーズ中もっとも僕好みの作品だと思いました。なんというか、隅々まで僕には得心がいく、という感覚。大好きな作品ですので、みなさまにもぜひ読んで頂きたいです。オススメ。

これで百鬼夜行シリーズ再読プロジェクトが無事完結。『鵺の碑』はまだですか?首を長くして待っておりますよ、京極さん。
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『ノン+フィクション』

古川日出男さんの『ノン+フィクション』を読む。

古川さん自身の言葉によれば「旅行記であり短編集」。普通に考えればエッセイ集なのですが、そもそも古川さんの書くエッセイはエッセイではないので、限りなくフィクショナルな、あるいはこういってよければ小説的な本に仕上がっています。戯曲も含まれていますしね。

素晴らしいなと思ったのは、ハワイのギター奏者マカナについて書かれた文章と、舞踏家の黒田育世さんについて書かれた文章。音楽や舞踏についての古川さんの文章は、はちきれんばかりに奔放で自由で先鋭的なんですよね。これぞ古川さんの真骨頂。読んでいるだけでワクワクします。

ああ、いい本を読みました。次の古川さんの小説が楽しみ。
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『スタイルズ荘の怪事件』

アガサ・クリスティー著、田村隆一訳の『スタイルズ荘の怪事件』を読む。

クリスティのデビュー作であり、記念すべきポワロの初登場作。ばらまかれた手がかりを拾い集めて一筋の美しい真相を導き出す、ポワロの灰色の脳細胞が大活躍します。奇怪で意味不明な毒殺事件がはらはらとその仮初の衣を脱ぎ落とし、実にシンプルな深層が見えてくる構成に感銘を受けました。デビュー作ということで、ポワロの亡命のエピソードやヘイスティングスの傷痍軍人としてのエピソードがふんだんに語られるのも興味深い。クリスティの魅力にどっぷりはまりました。オススメ。

これからクリスティ全作品読破プロジェクトをスタートします。ゆっくり着実に、楽しませていただきますよ。
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2010年10月31日

『13日間で「名文」を書けるようになる方法』

高橋源一郎さんの『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を読む。

高橋さんの明治学院大学での授業をもとにした、文章読本。授業の形式になっているので、高橋先生のゼミに参加しているつもりで気軽に読めます。

ただし、この本に書かれているのは名文をうまく書くコツではありません。むしろ、「名文」と呼ばれるものの内実を取り替えてしまうことによって、学生を「名文」家に変えてしまう、トリッキーな企みが描かれています。ただ、このトリッキーさが「文学」の王道でもあるんですよね、実は。文章読本らしからぬ文章読本、堪能しました。
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『道徳という名の少年』

桜庭一樹さんの『道徳という名の少年』を読む。


非常に幻想的な小説です。本の装丁が装飾的で、文章自体の分量が少なめ。お伽話のようにパッケージされた小説ですが、中身はお伽話というにはややビター。美しい女を登場させる冒頭は本当に桜庭さんらしいし、その後の展開も、美しくも苦々しい雰囲気を保ちつつ進むところが桜庭さんらしい。

次はもっと長いおはなし、あるいは短編集なんかも読んでみたいですね。
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『オープン・セサミ』

久保寺健彦さんの『オープン・セサミ』を読む。

人生にはままならないことがたくさんあるけれども、時に目の前がすっと開けて、困難のその先へ進めることがある。久保寺さんは「オープン・セサミ」という魔法の呪文を小説の主人公たちにかけることで、彼ら彼女らをままならなさの一歩先の新しい経験へと心を込めて送り出します。

さまざまな年齢と性別の主人公が一歩先へと踏み出す短編集なのですが、僕が好きなのは「彼氏彼氏の事情」。腐女子受けしそうなテーマを、実に切なくてしかもさらっと書き切る久保寺さんの筆力に感嘆しました。

元気になりたい人、ぜひ読んでください。オススメ。
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『見えない復讐』

石持浅海さんの『見えない復讐』を読む。

大学に復讐を誓う大学院生たちと、それを利用しようとするベンチャー企業向け投資会社の社員。二つの復讐が重なり合うサスペンスです。

いつもの石持作品と同じく、どうして論理的に考えてその可能性が正解だと思えるのか?はわかりません。論理的にでもテイスト的にでもいいから、いくつかのもっとありそうな選択肢をきちんと消去して欲しい。あと、結末があまりに短絡的すぎやしないか、とも思いました。登場人物が合理的で冷静だから論理合戦は面白いのに、ねえ。なんだか石持作品と僕は相性がよくないみたい。

しかしそれ以上に気になるのは舞台設定。僕、こんな大学院は嫌です(苦笑)。
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『完全・犯罪』

小林泰三さんの『完全・犯罪』を読む。

奇想に満ちた短編集。僕が好きなのは表題作ですね。非常にめんどうな設定と見せかけた時間SFなのですが、ラストの一行の脱力感が非常に心地よい。頭のよい人が書いたからこういうオチで遊べるんだろうなあ。とても好きな作品です。

その他の作品も奇妙な読み心地にあふれた作品ばかり。教養ある芸の妙を楽しんでください。
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2010年10月28日

『フロム・ヘル(上)(下)』

アラン・ムーア/エディ・キャンベル『フロム・ヘル(上)(下)』を読む。

切り裂きジャック事件を題材にした、コミックノベルの最高傑作。この未解決事件に関する説得的な一つの仮説をもとに、アランが話をふくらませ、そしてエディがおぞましい絵でそれを表現する形でこの作品が出来上がったようです。

この仮説が非常に良くできていてそれだけでも面白いのですが、セリフと絵がこれまたすごい。絵と台詞で表現する、ということの意味をこれほど知りつくした二人はいないのではないでしょうか。特に圧巻は下巻の殺人と死体凌辱のシーン。白黒のページからこれほどの狂気を感じたことはありません。

怖いのが苦手な人、そもそもマンガが苦手な人などいろいろいると思いますが、この本は絶対に読んだ方がよいです。強く強く強くオススメ。それにしてもみすず書房と柳下毅一郎さん、いい仕事しすぎです。
posted by △ at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | もじにいりびたる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『寝ても覚めても』

柴崎友香さんの『寝ても覚めても』を読む。

消えた恋人とそっくりの人物があなたの目の前に現れたら、あなたはその人に恋をするでしょうか?この、綺麗事を答えようと思えばいくらでも応えられるようなテーマに、小説の形で決定的な答えを柴崎さんが与えてくれました。ただし、この回答、模範解答からは程遠いです。

しかし柴崎さんの文体はすごい。眼前に起こる事を淡々と描写するだけで、すごく小説になっている。小説を読むこととはストーリーを読むことだと思っている読者の人は、柴崎さんの小説は全く受け付けないかもしれません。でも、小説を読むことが描写を読むことだとわかっている人は、柴崎さんがいかに優れた書き手であるかがわかるはずです。今、自分の作り上げた小説に対してこれほど巧みシャッターを切れる小説家は他にいません。柴崎さん、恐るべし。

非常に強い印象を残すラストにも注目です。この小説を受け渡されてしまって、読者は平常心でいられるのか。ぜひ、打ちのめされてください。強く強くオススメです。
posted by △ at 23:27| Comment(1) | TrackBack(1) | もじにいりびたる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『よそ見津々』

柴崎友香さんの『よそ見津々』を読む。

柴崎さんのエッセイ集。柴崎さんって、ある意味「冷たく」すらあるその作風とは違って、エッセイでは「若い女性らしい感性」を見せていて、それがとても意外。それが計算なのではと勘繰ってしまう僕は、柴崎さんの小説の毒にあてられすぎなのかな?ファッションや食に関する話も、楽しく読めたんだけど、裏読みせねばいけない気がしてしまった(苦笑)。
posted by △ at 23:27| Comment(0) | TrackBack(1) | もじにいりびたる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする